障害を持つ方の“バリアフリー住宅”にこだわる名古屋の設計事務所です。 車いす利用者の方、全身性障害の方の、より良い住まいを一緒に考えます。

名古屋市瑞穂区のさつき邸 ~分譲マンション3室ぶち抜き~

名古屋市瑞穂区のさつき邸

~分譲マンション3室ぶち抜き~

はじめまして。今回から住宅関係のコーナーを担当することになりました、建築士のどんちゃんです。このページは家を住みやすく改造し、生活している方々のお宅を訪問し、工夫した点、失敗した点などをインタビューするコーナーです。

それでは、第1回目として「突撃レポート」のさつきさんのお宅を訪問します。さつきさんは結婚を機に引っ越されました。お宅はマンションの4階でエレベーターが付いてます。さつきさんは外では電動車いすを、家の中では事務用チェアーを利用しています。(1999年8月の記事)

どん:こんにちは。

さつきさん(以下さつき):どうぞいらっしゃいませ。

どん:おぉーこれはっ、自動ドアクローザー[*1]ですね。

[*1]自動ドアクローザー:開き戸(マンションの玄関ドアなど)を自動で開閉する装置。数社から製品が出ている。これはアブロイ社製。

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左が玄関。ドアの上に自動ドアクローザー

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車いす乗降スペース

さつき:そうです。スイッチでドアの開閉はもちろん、カギも自動で掛かります。 車いすだとカギの操作や玄関ドアの開閉が難しいので、高かったんですが思い切って付けました。

どん:よければ、いくらくらいしたのか教えていただけませんか?

さつき:工事費を含めて、30万円前半です。これでもだいぶ安くなってきているようです。

どん:それではお邪魔します。玄関の段差はスロープで解消してるんですね。マンションは たいてい段差が少ないのでスロープでOKですね。使い心地はどうですか?

さつき:外から玄関に入って来るとき運転が下手だと曲がり損ねたりしますが、 最近はだいぶ慣れてきました。スロープの勾配[*2]もなだらかで問題ないです。

[*2]スロープの勾配:通常室内のスロープは12分の1勾配以上。ちなみに電動車いすの登坂力はJIS規格で10゜ 以上(約5.7分の1勾配)。

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どん:トイレを見てもよろしいですか?

さつき:どうぞこちらです。

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トイレ内部

どん:ドアは引戸[*3]ですね。Vレール[*4]が入っているのでとても軽いですね。 いやぁーこれは、とても広いトイレですね。ちょっと計らせてもらいます。入り口の幅は92cm、 トイレの広さは横200cm、縦は便器のある一番狭いところで135cmと。一般に電動車いすが90゜回転 するのに必要なスペースが150cm×125cmと言われているので何とか電動でも入れそうですね。

[*3]引戸:フスマや障子など、日本古来の戸の開け方。戸を横に引く。

[*4]Vレール:引戸の敷居に埋め込むV型のレール。戸の下にレールに合った車輪を付けることにより軽く開閉することができる。

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さつき:ひと部屋あったのを壊して、トイレを広くしました。私にはこの広さで十分です。 便座はセンサーが付いていて、一定時間座っていると自動的に水が流れる優れ物です。

どん:次は洗面室を見せてもらえますか?

さつき:はい。洗面室は頻繁に使うので段差を無くし、ドアも無くして行き来しやすくしています。

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洗面室。奥に見えるのがキッチン

どん:洗面台も使いやすそうですね。これは車いす用ですね。

さつき:そうです。シャワー式なので頭も洗えます。洗面台の左横にスペースがあるので介助もしやすいです。

どん:こちらが浴室ですね。ユニットバスですか。浴室はどうですか?

さつき:浴室は改造したかったけど、予算の都合で我慢して手すりと段差解消のすのこだけを付けました。

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洗い場のすのこ

どん:マンションの浴室をバリアフリーに改造するのはかなり難しいですね。 そういえば部屋はすべて段差が無いですね。

さつき:リフォーム前は各部屋に段差があったんですが、バリアフリーにしました。

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キッチンからリビングを見る

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リビングからキッチンを見る

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リビング横の寝室

どん:ほかに何か工夫した所はありますか?

さつき:スイッチ類はすべて低い位置に変更しました。戸もできる限り引戸にして手すりを付けました。 部屋の仕切壁を無くして部屋を広くしたのでとても動きやすいです。ちょっとそれますが、 床や壁には無垢の床材やしっくいなど自然素材を使っています。

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玄関から居間を見る

どん:なるほど。体にもやさしそうですね。それでは逆にこれは失敗したとか、 これもやっておけば良かったなどあったら教えて下さい。

さつき:浴室の手すりの位置が使いにくいのと、現在段差があってベランダに出られないので、 いつか板貼りのデッキを作り段差を無くしたいです。

どん:名古屋市の障害者住宅環境整備事業の制度を使ったそうですが、制度に関してはどうですか?

さつき:前住んでいたアパートで一度使ったのですが、引っ越せばまた使えると聞いたので、 もう一度使いました。申請などは制度のことをよく知っている建築士さんに任せたので、 面倒なことはありませんでしたが、相変わらず訪問相談や工事着工までの期間がかかります。 そういえば、先ほど話した浴室の手すりですが、制度で直せますか?

どん:工事した箇所の再工事は基本的に自己負担だそうです。 まだまだこの制度には問題がありそうですね。それでは今日はどうもありがとうございました。

さつきさんのお宅は、バリアフリー住宅でありながら、あまりそうは感じさせないお宅でした。手すりは既製品を使わず大工さんのお手製だったり、車いす用洗面台も一般の住宅にあっても違和感がないような製品が選んでありました。トイレも狭からず広からず、居心地(?)の良さそうな空間でした。また細かく分かれていた部屋を一つの部屋にすることによって、車いすでも動きやすい広々とした空間を生み出していました。室内の移動も玄関から寝室まで一本の道ができ、その道の途中にトイレ、洗面、浴室が配置され移動しやすそうでした。バリアフリー対応の改造だけではなく、壁や天井などのリフォームも含まれているので工事費は助成金(100万円)を大幅に越えているそうです。

※さつきさん宅が、愛知県主催の平成12年度「わが家のリフォームコンクール」の最優秀賞を受賞しました。

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